Drive - Compact Tube Buffer v3
小型・低消費電力の真空管「Nutube」を使ったブースター・オーバードライブペダルです。トーン回路としてハイパスからローパスまでをシームレスに切り替えられるフィルタ回路を採用し、またドライ音にフィルタ回路を通した音をミックスするDRY MIX機能も備えています。
写真
解説
オペアンプを使った非反転増幅アンプ、FETを使った差動増幅アンプ、Nutubeを使った真空管アンプ、オペアンプを使った差動増幅回路の4段構成のブースター・オーバードライブ回路になっています。
初段と4段目のオペアンプ回路はクリーンな増幅回路になっていますが、2段目のFET増幅アンプと3段目の真空管アンプ部分では前段の出力を大きくすることで出力を歪ませることが可能です。特にFET増幅アンプ部分の増幅率が大きいため、ゲインを上げていくとまずは真空管アンプ部分での歪みが発生し、さらにゲインを上げていくとFET増幅アンプ部分でも歪みが発生します。これによって、軽い歪み(サチュレーション)から、ディストーション並みの深い歪みまでを切り替えられます。
また、入力信号のレベルによっても歪みが変わるため、前段にブースターなどを接続し、そのON/OFFで歪みを切り替える、といった使い方も可能です。
トーン回路は低音域をカットするハイパスフィルタ(HPF)と高音域をカットするローパスフィルタ(LPF)を並列に接続し、それぞれの出力をミックスすることで、低音域・高音域の両方を調整できるようにしています。また、DRY MIX / TONE MIXスイッチをDRY MIX側に設定することで、初段の非反転増幅アンプのみを通った音(DRY音)を出力にミックスすることが可能です。
なお、HPFのカットオフ周波数は約232Hz(Q=3.43)、LPFのカットオフ周波数は約1.864kHz(Q=2.75)に設定しており、カットオフ周波数近辺(HPFでは100~200Hz前後、LPFでは1k~2kHz前後)が軽くブーストされる特性になっています。
トーン回路の周波数特性
前述のように、トーン回路はHPFとLPFを並列に接続してそれぞれの出力をミックスする構造になっています。ミックス割合はMIX RATIOツマミで調整します。また、MIX RATIOツマミでドライ音もしくはNutubeを通った音とのミックス割合を調整します。
MIX RATIOツマミをドライを反時計回りに回しきった状態ではトーン回路がバイパスされます。時計回りに回すとトーン回路を通った信号の割合が増えていき、強く低音/高音がカットされます。
下記はシミュレーションによるトーン回路の周波数特性例です。
TONE MODEをセンター(12時)に設定した場合
250Hz近辺と1.8kHz近辺がブーストされ、それ以下/以上の周波数帯はカットされます。
TONE MODEを反時計回りに回しきった場合
250Hz近辺がブーストされ、150~200Hz以下の周波数帯がカットされます。
TONE MODEを時計回りに回しきった場合
2kHz近辺がブーストされ、2~2.8kHz以上の周波数帯がカットされます。
設定方法
ブースターやサチュレータ、オーバードライブとして使用する場合はゲイン切り替えスイッチを「LOW GAIN」側に、ディストーション並みの歪みが欲しい場合は「HIGH GAIN」側に切り替えてください。
端子・ボタンの解説
①出力端子
一般的な6.3mmフォーンジャック(モノラル)です。
②電源入力端子
ストンプボックスで一般的に使用されている、2.1mm/センターマイナス型の端子を備えた9V ACアダプタを使用できます。入力端子にフォーンジャックが接続されていない状態でも、電力さえ供給されれば電源ON状態になるのでご注意ください。
③入力端子
一般的な6.3mmフォーンジャック(モノラル)です。
④VOLUME
出力音量を調整するツマミです。
⑤GAIN
真空管アンプのゲインコントロールに相当するツマミです。時計回りに回すほど内部ゲインが上がり、出力が歪みます。
⑥POWER LED
エフェクトがONになっている場合に点灯します。
⑦ゲイン範囲切り替えスイッチ
下側(LOW GAIN)に設定するとゲイン上限は小さくなりますが、微調整がしやすくなります。逆に上側(HIGH GAIN)に設定するとより大きなゲインが設定できるようになります。
⑧MIXモード切替スイッチ
下側(TONE MIX)に設定すると、MIX RATIOツマミでトーン回路の効きを調整できます。上側(DRY MIX)に設定すると、MIX RATIOツマミでトーン回路を通った信号と原音(歪みのない音、ドライ音)をミックスできます。
⑨TONE MODE
トーン回路のLPFとHPFのミックス割合を設定します。反時計回りに回しきると低音域のみがカットされます。時計回りに回しきると高音域のみがカットされます。その中間では、ツマミの位置に応じて低音域と高音域の両方がカットされます(反時計回りに回すほど低音域がカットされ、逆に時計回りに回すほど高音域がカットされるようになる)。
⑩MIX RATIO
MIX MODE切り替えスイッチが下側(TONE MIX)の場合、トーン回路の効きを調整できます。反時計回りに回しきった状態では、トーン回路がバイパスされます。時計回りに回していくと、低音域/高音域のカット量が増えていきます。
上側(DRY MIX)の場合、トーン回路を通った信号と原音(歪みのない音、ドライ音)のミックス割合を調整します。反時計回りに回しきった状態ではドライ音のみが出力され、時計回りに回していくとドライ音にトーン回路を通った信号がミックスされていきます。なお、トーン回路を通った信号はドライ音よりも信号レベルが大きいため、このツマミが7~12時前後の設定では音量が小さくなる傾向があります。あわせてVOLUMEツマミで出力ボリュームを調整してください。
⑪Nutube動作確認用の穴
Nutubeが発光している様子を確認するための穴です。ゲインを上げている場合、入力信号に応じてNutubeが発する光が弱くなりますが、異常ではなく仕様通りの挙動です。
⑫ON/OFF切り替えスイッチ
エフェクトのON/OFFを切り替えるスイッチです。OFF時にはIN端子とOUT端子が直接接続された状態になるトゥルーバイパス構造です。
使用上のご注意
- 本機には電源スイッチが搭載されておらず、DC9V入力端子に電力が入力されると電源がON状態になります。ポップノイズ等を防ぐため出力端子は最後に接続してください。
- DC9V出力/センターマイナスの適切なACアダプタをご使用ください。
- ACアダプタの電圧は厳密にDC9Vである必要はありませんが、約9Vより低い場合は正常に動作しない可能性があります。また、9Vを大幅に超える電圧を入力した場合の動作は保証しておりません。入力電圧が12V前後を超えると内部に組み込まれた保護回路が動作して電源供給を遮断します。その場合、電源アダプタの電源を切る、もしくはDC9V入力プラグを一時的に取り外すなどして電源供給を止めた状態でしばらく放置すると復旧します。
また、9Vを大幅に超える大電圧を入力した場合などは保護回路ごと内部の回路や素子が破壊される可能性がありますのでお気を付けください。
仕様
- 入力端子:6.3mmフォーンジャック(TS)×1
- 出力端子:6.3mmフォーンジャック(TS)×1
- 電源入力端子:内径2.1mm/外形5.5mm、センターマイナス
- 対応入力電圧:約9V
- 消費電力:約60mA
- 本体サイズ:約65×32×115(W×H×D、突起部を除く)
バイアス調整とヒーター電圧調整
本機内には2つの調整用トリマ(半固定抵抗)が用意されています。
- 「BIAS」トリマ(RV1)でNutube(真空管)アンプ回路に入力する信号のバイアス電圧を調整できます。
- 「FIL.OFFSET」トリマ(RV2)でNutubeアンプ回路のヒーター(フィラメント)電圧を調整できます。
Q2(デュアルFET)の1番もしくは3番ピンの電圧がバイアス電圧に相当します。バイアス調整を行う際は、この部分の電圧をテスター等で測定しながらRV1を調整してください。推奨値は2.7V前後です。推奨値からずれるとゲインを上げた際の波形が非対称になっていって倍音が増えたり、Nutubeアンプ回路部分のゲインが下がることがあります。
また、ヒーター電圧については、測定ポイント1と2(Nutubeの1・2番ピンと16、17ピン)の電圧ができるだけ等しくなるようにRV2を調整します。おおむねセンターの位置で同じくらいの電圧になるようになっていますが、テスター等で測定ポイント1および2の電圧を測定しながら調整してください。これらの電圧がずれると出力に含まれるノイズが増えたり、出力波形が非対称になって倍音が増えることがあります。
オペアンプについて
本機はオペアンプを交換できる構造になっています。これらを別の種類のオペアンプに交換することで、ノイズ低減などの音質変化が得られるかもしれません。