Compress - Opto Compressor (v1.2)

LEDとフォトレジスタを使用した、オプティカルタイプのペダル型のコンプレッサーです。音質をなるべく変えずにトランジション(音の立ち上がり)をコントロールすることに主眼を置いて設計しています。
基本回路は旧バージョン(v1.0)から変わっていませんが、内部構造を見直しているほか、保護回路やフォトレジスタ素子のバラツキを補正する回路の追加を行っています。
写真
動作原理
フォトレジスタ(photo resistor)は、光によって抵抗値が変わる部品です。光が当たっていない場合は抵抗値が大きく、照射する光が強いほど抵抗値が小さくなります。本機では、入力信号をバッファアンプに通したあとに分岐させてLEDとフォトレジスタ、出力バッファアンプに入力し、さらにLEDが発する光をフォトレジスタに入力します。フォトレジスタの片方の端子はGND(0V)に接続されているので、フォトレジスタの抵抗値が小さくなると、その分GND側に流れる電流が大きくなり、出力バッファアンプに流れる電圧は低下します。つまり入力信号が強い(=音量が大きい)ほどLEDは強く光り、その結果出力信号は小さくなる(=圧縮される)ことになります。
なお、本機ではLEDドライバアンプの前にハイパスフィルタおよびアタック制御回路を組み込むことで、低域への反応やアタックを調整できるようにしています。
端子・ボタンの解説
設定方法
本機を最初にお使いになる際は、まずは各つまみを12時方向に設定した状態から調整することをおすすめします。この状態でフットスイッチのON/OFFを行い、ON/OFFどちらの場合も同じくらいの音量になるようVOLUMEつまみで出力音量を調整します。
より圧縮を強くしたい場合はCOMP.つまみを時計回りに、弱くしたい場合は反時計回りに回してください。このとき出力音量も変化しますので、あわせてVOLUMEつまみも調整してください。
ATTACKつまみを時計回りに回すとアタック部分が強調され、逆に左に回すとアタックが目立たなくなります。必要に応じて調整してください。
接続する楽器・機材によっては、低音がより強く圧縮されてしまうことがあります。その場合、LO SENS.つまみを反時計回りに回していくことで、低音域に対する反応を弱めることができます。反時計回りに回しきった状態では、低音域にはほぼ反応しなくなり、入力信号の中~高音域にのみ反応して圧縮レベルが決まるようになります。
ATTACKつまみを反時計回り方向に回してアタックへの反応を早くすると、入力信号のレベルが大きい場合や強く圧縮を行った場合に出力が軽く歪んだ感じになることがあります。これは高速かつ大きく信号が圧縮されることで波形が歪むために発生するもので、仕様上想定される挙動です。
圧縮特性
次の図は、入力信号レベル(横軸)による出力信号レベル(縦軸)の変化を測定した結果をグラフ化したものです。測定には440Hzの正弦波を使用し、グラフの目盛りは横軸・縦軸ともにdBです。
アタック/リリース特性
アタックタイムはATTACKつまみ0%(反時計回りに回しきった状態)でおよそ10~20ミリ秒、ATTACKつまみ100%(時計回りに回しきった状態)でおよそ数十ミリ秒程度です。
また、リリースタイムに関してはATTACKつまみの設定に関わらずおよそ30ミリ秒程度です。
なお、上記の特性はいずれもCOMP.つまみ50%の場合の結果です。入力信号の大きさやCOMP.つまみの設定によってもこれらの値は変動します。
周波数特性
下記はCOMP.つまみを0%(反時計回りに回しきった状態)に設定した場合の周波数特性です。わずかに60Hz以下の低域レベルが低下しますが、それ以外はほぼフラットな特性です。
本機はLO SENS.つまみで低域(約300Hz以下)に対する反応を調整できます。下記の図はCOMP.つまみを50%、LO SENS.つまみをそれぞれ0%/50%/100%に設定して周波数特性を測定したものです。LO SENS.つまみを反時計回りに回すことで、低域への反応を弱めることができます。
使用上のご注意
- 定格電源電圧は9Vですが、設計上は9Vをある程度超えた電圧を加えても正常に動作します。(約9.6Vの電源電圧で問題なく動作することを確認しています)。ただし、それ以上の電圧での動作検証は行っていませんので、出力電圧が高い電源を使用する際はご注意ください。特に、15Vを超える電圧を加えた場合、製品寿命が短くなったり、故障が発生する恐れがあります。
- 本機は電源部分に保護回路が組み込まれており、なんらかのトラブルで内部がショートしたり、高い電圧が加えられた場合は一時的に電源が遮断されます。その場合、電源を外してしばらく待ってから再度ご使用ください。
- 本機はトゥルーバイパス仕様です。
- 電源投入直後にエフェクトON/OFFを切り替えると大きなノイズが出力される場合があります。
ヒント&TIPS
- 中央のスイッチを「REDUCTION」に設定した場合、赤色(5連)LEDの点灯個数でおおよその圧縮率を確認できます。すべてが点灯している場合は圧縮率がほぼ0、1個消灯するごとにおよそ3dB/-6dB/-11db/-16dBとなります。たとえば圧縮率を-6dB前後に設定したい場合、信号入力時にLEDが3つ点灯(2つ消灯)するよう「COMP.」ツマミを調整します。
- 「ATTACK」つまみを「FAST」側に設定した場合、出力信号が歪んだ感じになることがあります。これは圧縮によって信号波形が急に変形するために発生します。
仕様
- 入力端子:6.3mmフォーンジャック(TS)×1
- 出力端子:6.3mmフォーンジャック(TS)×1
- 電源入力端子:内径2.1mm/外形5.5mm、センターマイナス
- 対応入力電圧:約9V
- 消費電力:約25mA(無信号時)、最大約55mA(信号入力に応じて変化)
- 本体サイズ:約65×32×115(W×H×D、突起部を除く)
技術情報
キャリブレーション(圧縮特性およびメーター特性の調整)
本機は内部に6つのトリマポット(半固定抵抗器)が設置されており、これらで圧縮特性およびメーター特性の調整が可能です。ただし、これらを不用意に変更するとメーターの表示と実際の圧縮特性がずれることがありますのでご注意ください。
それぞれのトリマポットでは、次の調整が行えます。
- RV10(MeterLv):レベルメーターの特性を調整できます。時計回り方向に回すとメーターの反応が強くなり、同じ出力レベルでもメーターの表示量がより大きくなります。初期状態は50%(12時の方向)です
- RV6(CmpRatio):出力信号の圧縮特性を調整できます。反時計回り方向に回すと出力信号がより強く圧縮されるようになります。初期状態は50%(12時の方向)です
- RV9(MeterReduction):リダクションメーターの特性を調整できます。無信号時にリダクションメーターが全点灯するように設定します。
- RV4(CmpOffset):フォトレジスタの特性のばらつきを補正できます。通常は変更しないでください
- RV3(MeterOffset):フォトレジスタの特性のばらつきを補正できます。通常は変更しないでください
- RV8(MeterRatio):リダクションメーターの特性を調整できます。通常はRV6(CmpRatio)と同じ位置に設定します
RV6(CmpRatio)を変更した場合、次の調整も行ってください。
- 本機の電源を入れます
- 本機中央のメーターモード切り替えスイッチを上側(「REDUCTION」側)に設定します
- RV8(MeterRatio)RV6(CmpRation)を同じ位置に設定します
- 入力信号を入れない状態(たとえば接続したギター/ベースのボリュームを0にした状態)でRV9(MeterReduction)を回し、リダクションメーターのLEDが4つ点灯した状態(一番右側のLED1つだけが消灯した状態)にします
- RV9を時計回り方向にすこしずつ回していき、すべてのLEDが点灯したタイミングでRV9を回すのを止めます
なお、もしRV3、RV4の位置を変更してしまった場合は、次のようにトリマポットを調整することで初期状態に戻すことができます。
- 電源を取り外します
- 中央の基板モジュールを取り外します
- モジュールが接続されていたピンの17ピン(左列下から2番目)に電源の+9Vを、4番ピン(右列下から4番目)に1kΩの可変抵抗器、電流メーター、電源のGND側を直列に接続します
- 電流メーターが10mAを示すように接続した可変抵抗器を調整します。このとき、抵抗器の抵抗を小さくしすぎると過電流が流れて素子を破壊する可能性がありますのでご注意ください
- 基板左中央、オペアンプの上にあるテスト用パッド(「Vbias-GND」)の上側(GND)と、基板右下のキャリブレーション用パッド(「A B」)の上側(B)の間の抵抗値が210ΩになるようRV3(MeterOffset)を調整します
- 基板左中央、オペアンプの上にあるテスト用パッド(「Vbias-GND」)の下側(Vbias)と、基板右下のキャリブレーション用パッド(「A B」)の下側(A)の間の抵抗値が210ΩになるようRV4(CmpOffset)を調整します
なお、中央の基板モジュールを再度取り付ける際は方向にご注意ください。接続品部分の四角いパッドが右下に来るのが正しい状態です。