Compress - Opto Compressor

Compress

LEDとフォトレジスタを使用した、オプティカルタイプのペダル型のコンプレッサーです。音質をなるべく変えずにトランジション(音の立ち上がり)をコントロールすることに主眼を置いて設計しています。

写真

動作原理

フォトレジスタ(photo resistor)は、光によって抵抗値が変わる部品です。光が当たっていない場合は抵抗値が大きく、照射する光が強いほど抵抗値が小さくなります。本機では、入力信号をバッファアンプに通したあとに分岐させてLEDとフォトレジスタ、出力バッファアンプに入力し、さらにLEDが発する光をフォトレジスタに入力します。フォトレジスタの片方の端子はGND(0V)に接続されているので、フォトレジスタの抵抗値が小さくなると、その分GND側に流れる電流が大きくなり、出力バッファアンプに流れる電圧は低下します。つまり入力信号が強い(=音量が大きい)ほどLEDは強く光り、その結果出力信号は小さくなる(=圧縮される)ことになります。

なお、本機ではLEDドライバアンプの前にハイパスフィルタおよびアタック制御回路を組み込むことで、低域への反応やアタックを調整できるようにしています。

本機のブロックダイアグラム

なお、本機はRECUTIONツマミで圧縮率の調整が可能ですが、いわゆるスレッショルドを調整するツマミはありません。つまり、出力信号は常に圧縮された状態になっています。ただし、本機の圧縮比はいわゆるソフトニータイプになっているため、入力信号が小さい場合はあまり圧縮されず、入力信号が大きい場合は大きく圧縮される構造になっています。

下記のグラフはCOMPRESSツマミをそれぞれ0/25%/50%/75%/100%に設定した場合の、入力信号(1kHzの正弦波)に対する出力信号レベルを実測したものです。COMPRESSツマミを25%(おおむね10時前後の位置)に設定した場合、20mVあたりまではあまり圧縮されず、そこから徐々に圧縮量(圧縮比)が増えていく感じになっています。また、入力信号レベルが大きい場合やCOMPRESSツマミを時計回りに大きく回した場合は出力信号は大きく圧縮され、リミッターのように動作するようになります。

圧縮比のグラフ

設定方法

まず、トグルスイッチを上(REDUCTION)に、SC HPFツマミを反時計回りに回しきった状態にし、そのほかのツマミはすべて12時方向に設定します。この状態でON/OFFを行い、ON/OFFどちらの場合も同じくらいの音量になるようVOLUMEツマミで出力音量を調整します。

より圧縮を強くしたい場合はREDUCTIONツマミを時計回りに、弱くしたい場合は反時計回りに回してください。このとき出力音量も変化しますので、あわせてVOLUMEツマミを調整してください。

ATTACKツマミを右に回すと音のアタック部分が強調され、逆に左に回すとアタックが目立たなくなります。必要に応じて調整してください。

接続する楽器・機材によっては、低音がより強く圧縮されてしまうことがあります。その場合、SC HPFつまみを時計回りに回していくことで、低音域に対する反応を弱めることができます。時計回りに回しきった状態では、低音域にはほぼ反応しなくなり、入力信号の中~高音域にのみ反応して圧縮レベルが決まるようになります。

REDUCTIONを大きくした状態でATTACKをFAST側に設定すると、出力が軽く歪んだ感じになります。これは高速かつ大きく信号が圧縮されることで波形が歪むために発生するもので、仕様上想定される挙動です。

端子・ボタンの解説

controls

①出力端子

一般的な6.3mmフォーンジャック(モノラル)です。

②電源入力端子

ストンプボックスで一般的に使用されている、2.1mm/センターマイナス型の端子を備えた9V ACアダプタを使用できます。入力端子にフォーンジャックが接続されていない状態でも、電力さえ供給されれば電源ON状態になるのでご注意ください。

③入力端子

一般的な6.3mmフォーンジャック(モノラル)です。

④VOLUME

出力音量を調整するツマミです。

⑤REDUCTION

音量を圧縮する強さを調整するツマミです。時計回りに回すと、より強く出力信号が圧縮されます。なお、本機はいわゆる「ソフトニー」タイプの圧縮カーブとなっています。

⑥POWER LED

エフェクトがONになっている場合に点灯します。

⑦レベルメーターモード切り替えスイッチ

レベルメーターに表示する内容を選択します。上側(REDUCTIONモード)に設定すると、圧縮レベルを表示します。下側(OUTPUT LVモード)に設定すると出力信号レベルを表示します。センターに設定するとレベルメーターを消灯します。

⑧圧縮レベルLED

フォトレジスタに入力される信号レベルを簡易的に示すLEDです。信号レベルが大きいほど明るく光ります。この信号レベルは圧縮レベルにほぼ一致するので、出力信号がどの程度圧縮されているかの目安になります。

⑨SC HPF

フォトレジスタに入力される信号に適用するハイパスフィルタのカットオフ周波数を調整するツマミです。反時計回りに回しきった状態で約18Hz、12時の状態で約100Hz、時計回りに回しきった状態で約340Hzになります。

⑩ATTACK

信号が入力されてから出力信号が圧縮されるまでの遅延を調整するツマミです。反時計回り(FAST方向)に回すと短くなり、時計回りに回すと長くなります。この遅延時間はREDUCTION(圧縮量)の設定値にも影響され、圧縮量が大きいほど遅延時間も長くなります。

⑪レベルメータ

圧縮レベルまたは出力信号レベルを表示するインジケータです。各LEDは左から約-16dB/-11dB/-6dB/-3dB/0dB以上の場合に点灯します。

レベルメータがREDUCTIONモードの場合、たとえばLEDが3つ点灯していれば圧縮レベルはおよそ-6dB~-3dBとなります。

⑫ON/OFF切り替えスイッチ

エフェクトのON/OFFを切り替えるスイッチです。OFF時にはIN端子とOUT端子が直接接続された状態になるトゥルーバイパス構造です。

使用上のご注意

  • 本機には電源スイッチが搭載されておらず、DC9V入力端子に電力が入力されると電源がON状態になります。ポップノイズ等を防ぐため出力端子は最後に接続してください。
  • DC9V出力/センターマイナスの適切なACアダプタをご使用ください。
    • ACアダプタの電圧は厳密にDC9Vである必要はありませんが、約7Vより低い場合正常に動作しない可能性があります。また、9Vを大幅に超える電圧を入力した場合の動作は保証しておりません。特に約19Vを超えると内部素子が破損する可能性がありますのでご注意ください。

仕様

  • 入力端子:6.3mmフォーンジャック(TS)×1
  • 出力端子:6.3mmフォーンジャック(TS)×1
  • 電源入力端子:内径2.1mm/外形5.5mm、センターマイナス
  • 対応入力電圧:約9V
  • 消費電力:約25mA(無信号時)、最大約55mA(信号入力に応じて変化)
  • 本体サイズ:約65×32×115(W×H×D、突起部を除く)

内部調整トリマとジャンパー端子

本機内には4つの調整用トリマ(半固定抵抗)が用意されています。

  • 「RATIO」トリマで圧縮比(RATIO)の調整が可能です。時計回りに回すとより圧縮比が大きくなります。
  • 「RDM_RAT」トリマおよび「RDM_CALIB」ではレベルメータがREDUCTIONモードの際の表示レベル調整を行えます。通常は、RDM_RATトリマをRATIOトリマと同じ位置に設定し、無入力(INPUTに何も接続していない状態)でLEDが5つすべてぎりぎり光る位置に設定します。なお、RDM_RATトリマとRDM_RATトリマの取り付け向きがそれぞれ異なる点にはご注意ください(たとえば入出力端子を上に向けた状態でRATIOトリマが9時の位置の場合、RDM_RATトリマは3時の位置で同じ位置になります)
  • 「LVM_CALIB」トリマでレベルメータがOUTPUT_LVモードの際の表示レベル調整を行えます。一般的なエレクトリックギター/ベースをご使用の場合は、通常は反時計回りに回しきった状態が適正です。信号レベルが大きい機器を接続している場合は、時計回りに回すことで表示レンジを大きくできます。

また、ピンヘッダJ5をショートさせることで、電源部のノイズフィルターをバイパスすることができます。ノイズの少ない高品質な電源を利用している場合、これによって入出力できる最大信号レベル(ヘッドルーム)を若干ですが増やすことができます。

オペアンプについて

本機はオペアンプを交換できる構造になっていますが、U5(左上の14ピンオペアンプ)およびU4(右上の8ピンオペアンプ)については交換を推奨しません。これらを別の種類のオペアンプに交換した場合、回路が正常に動作しなくなる可能性があります。

U2(右下の8ピンオペアンプ)については、入力段および出力段のアンプとして使用しており、別の種類のオペアンプに交換することでノイズ低減などの音質変化が得られるかもしれません。

技術情報